
鍋ができあがり、テーブルに並べた。
湯気が立ち上る中、向かい合って座る。
「いただきまーす!」
そう言って食べ始めた鍋は、シンプルだけど普通に美味しかった。
「やっぱり人と食べるご飯は美味しいね!」
彼女がそう言って笑う。
会話も自然に続いて、空気も悪くない。
むしろ、初対面とは思えないくらい気が楽だった。
そのときだった。
「乾杯しよ?」
そう言って、彼女はバッグから缶チューハイを取り出した。
プシュッと音を立てて開ける。
(あれ…?)
頭の中に、小さな違和感が浮かぶ。
思い出した。
(この人、車で来てたよな…?)
さっき、コインパーキングに停めたって。
じゃあ——
視線を彼女に向ける。
彼女は何も気にしていない様子で、普通に飲みながら笑っている。
「あれ、今日って車で来てるんだよね?」
そう聞くと、彼女はあっさりと答えた。
「うん、そうだよ!」
そして、そのままもう一口飲んだ。
一瞬、言葉が出なかった。
(え…?)
頭の中で状況を整理しようとする。
でも、うまく噛み合わない。
「それって…大丈夫なの?」
恐る恐る聞くと、彼女は軽く笑って言った。
「全然大丈夫!」
その一言が、妙に引っかかった。
軽すぎる。
何も考えていないみたいな、その言い方。
「なんで?」
そう聞いた瞬間、彼女は笑いながら——
「だって、田舎だから警察に捕まらなよ」
意味が、わからなかった。
そもそも警察に捕まる以前に
他人を巻き込む事故でもしたらどうするのか
さすがに僕も
「はじめましてだけどさすがに飲酒で帰るのはまずいから泊まっていって」
だけど彼女は
「これぐらいなら大丈夫だから」
僕も弱い人間だからそこまで強く言えなかった
「初対面という距離感」
「壊したくなかった空気」
そして自分の弱さ
結局飲酒のことは目をつぶり
二人の時間を過ごした
案の定彼女は飲酒で帰宅した


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